お知らせ・セミナー告知 「ランサーズ 地方創生の取り組み」について、お知らせとセミナー情報などの告知ページです。

【インタビュイー】
市原市役所地方創生部地方創生課地方創生係
係長 平井秀作さん
主任 大川ちひろさん


千葉県中央部の海沿いに位置する千葉県市原市は、工業地帯を有し、工場やプラントが多く、そこで働く人が多い街です。にぎやかな街に感じられますが、若者や女性の転出超過(市内に入ってくる人数よりも市内から出ていく人数の方が多いこと)が地域課題となっています。

この地域課題の原因のひとつに、女性が働く場所が少ないということが挙げられています。と、同時に、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、リモートワークの普及が急速に進み、その利便性と必要性が高まって経済活動は地方回帰の様相を呈してきました。それを背景に市原市は、「女性が働きやすいまち市原」への取り組みとして、ランサーズと連携のうえ、子育て・介護などとの両立や市原の里山をはじめとしたいろいろな場所で暮らしながら自分らしく働くことのできる「新しい働き方講座」を2021年度に開始。2023年度まで3年間事業を実施しました。

【講座の様子(2022年度)】

【講座の様子(2022年度)】

リモートワーカーの育成とコミュニティの誕生

初年度である2021年度はコロナ禍での開催ということもあり、講座はすべてオンラインで実施。講座ではリモートワークでの働き方を学ぶとともに、市原市内に住む受講生同士のコミュニケーションも重視され、対面ではないもののオンラインチャットツールChatworkでのコメントのやり取りや講座の合間の自主勉強会などで交流が深まっていきました。

そして、講座終了後には「このつながりを終わらせたくない」という想いを持った受講生を中心に新しいコミュニティが誕生。講座後は、情報交換をメインに交流していましたが、数か月後にコミュニティを「ICHIHARAISE(イチハライズ)」と命名し、「ゆるく、楽しく、支え合えるみんなの居場所」をコンセプトに活動を始めました。

新しい居場所「ICHIHARAISE」(イチハライズ)

2022年度には、「ICHIHARAISE」にも所属する2021年度受講生が地域ディレクター・地域チューターとして受講生の学びをサポートする立場で運営に加わり、同じくオンライン講座を実施。2021年度・2022年度を合わせて、合計で42名が中級講座を修了し、リモートワーカーが育成されました。

ワーカーの自立、コミュニティの自走と継続を目指して

【講座の様子(2023年度)】

【講座の様子(2023年度)】

2023年度には、これまでの取り組みの成果を最大限に活かすため、新しいワーカーを増やすのではなく、前年度までに育成されたワーカーの自立とコミュニティの自走と継続を目指す事業を展開しました。対象は前年度までの「新しい働き方講座」の受講生で、運営にも受講生が加わりました。

まず、自分自身の強みを発見し、言語化することで、フリーランスとして自立し自力での営業や受注が可能になることを目的としたオンラインでのフォローアップセミナーを2回講座で実施。分析ツールや専門講師による実践的なワークにより、理論的な自分の強みの深い理解と強みを活かしたアプローチなどを具体的に学びました。

【マッチングイベントの様子】

【マッチングイベントの様子】

つぎに、地域の企業との交流を通じ、つながりを得ることで個人やコミュニティ(ICHIHARAISE)として仕事受注のきっかけとなればと地域企業3社をむかえマッチングイベントを開催。企業の困りごとをヒアリングし、自分の強みやコミュニティの特徴を踏まえてどのようなアプローチができるかを一緒に考えるワークを通じて、地域企業とのつながりを育みました。

マッチングイベントの参加者からは
「依頼に対して自ら考え、的確にニーズを聞くことが、フリーランスとして仕事をするうえで大事だと感じました」

「ICHIHARAISEが役立てることって何かあるのか不安に思っていましたが、どの企業さんも真摯にお悩みを話してくださり、ICHIHARAISEとのお仕事を前向きに考えてくださったことが大変ありがたかったです」

「ライティングなどの需要ももちろんですが、グループのもつ「ユーザー(主婦層)ならではの声」や雰囲気を高く評価してもらえたことが自信につながりましたし、今後の活動の一つの指針になるものを得られたと思います」

という声があり、企業との交流のみにとどまらず、ワーカーのフリーランスとしての意識のさらなる向上や今後にむけた展開が期待できる結果となりました。マッチングイベントは地域企業にも好評で、すでに2回目の開催が決定しており、継続的なつながりが生まれつつあります。

【マッチングイベント参加者】

【マッチングイベント参加者】

3年間の事業を振り返って

――3年間の事業を担当した市原市役所地方創生部地方創生課地方創生係の平井秀作係長、大川ちひろ主任にお話をうかがいます。市原市で3年間事業を続けてどんな変化がありましたか?

平井:これまで市で手掛けた事業では、事業をやっている間は継続しているのですが、事業が終わったらなんとなく活動全体が終わってしまう、後が続かない、という残念なことが良くありました。

ランサーズさんとの「新しい働き方講座」の事業では、1年目に受講生の中から自発的にコミュニティが生まれ、それが今も継続していることが良かったなと思います。それから、2年目から市原市の受講生に運営に加わってもらっているので、成長を感じることも多く、嬉しかったですね。また、安心感もありました。

大川:そうですね、参加者との深いつながりができたと私も思います。

【マッチングイベントの様子】

【マッチングイベントの様子】

――ランサーズとの協業事業でメリットだと感じたことを教えてください。

平井:「新しい働き方講座」のような講座実施は、市原市として初めての取り組みだったので、手探り状態でした。他の地方自治体での実績があったランサーズさんと一緒にできたことは安心感がありましたね。

1年目の受講者募集時にたくさんの応募があり、ほっとしたのを覚えています。講座に関しては、講師や事務局が「新しい働き方講座」の卒業生だったり、ランサーズで仕事をしている人だったり、みなさんが経験者で、受講生も「講師も自分と同じように悩んだこともあったんだな」と親近感をもてたのではないでしょうか。

また、ステップアップしていく講座だったので、受講生の変化をこちらも感じられて良かったです。それから、受講生が講座から脱落しないためのフォローやあたたかい雰囲気作りもいいなと感じました。

【講座の様子(2021年度)】

【講座の様子(2021年度)】

――事業を行う中でどんな気づきがありましたか?

平井:担当部署としては、市民と行政とのギャップが埋まったように感じています。参加者はさまざまで、最初からバリバリ働きたい人もいればそうでない人もいて、それぞれのライフワークバランスや活動ペースがあると、実際に会って意見を聞いたり活動を見たりすることで、理解できました。他の部署はまだこういった認識が薄いので、今後の課題でもあるなと感じています。

大川:同時に、コミュニティの自立に向け、行政が関わりすぎるのも良くないと思うので、彼らの自主性を尊重していきたいですね。ニーズに応えて関係部署につないだりするような役割やバックアップできる体制を整えていく必要もあると思います。

――3年の事業の中で一番の成果を教えてください

大川:やはり、コミュニティ(ICHIHARAISE)ができたことが一番ですね!約1年前からICHIHARAISEにはお仕事として、情報発信ツールのnoteで市原市の情報を発信する記事を発注しており、月に1回ほど更新してもらっています。

さらにこのコミュニティが自走し続けていってほしいということで、3年目はコミュニティやワーカーさんの自立をテーマに育てていくことにフォーカスして事業を展開しました。みなさん、能力は高いのですが遠慮がちな部分があるので、その後押しになっていたらいいなと思います。

また、市原市でまちづくりに関心のあるメディア会社を、コミュニティができた当初に紹介しました。地域での仕事やコミュニティの継続につながればと思っていましたが、現在ではその会社が運営するコワーキングスペースを利用したり、すでに一緒に仕事をしたりしているコミュニティメンバーもいるようです。

【ICHIHARAISE(動画より抜粋)】

【ICHIHARAISE(動画より抜粋)】

――お仕事コミュニティICHIHARAISEに今後期待することは何ですか?

平井:先ほどもお話しましたが、しりつぼみに終わる活動というのが多いので、ICHIHARAISEにはとにかく継続してほしいなと思います。仕事だけではなく、「第3の居場所」のような場所になっているので、ゆるやかなつながりで市原市での女性の居場所のひとつになってもらえればと。居場所づくりという面でも、他のコミュニティや行政事業との連携で仕事につながる動きも出てきています。

大川:ICHIHARAISEのメンバーから、仕事をストックして割り振るようなプラットフォーム的な役割もしたいというアイディアが出ていたので、それも楽しみだなと思っています。

また、2023年12月末に講座卒業生を紹介した「いちはらフリーランスガイド」を発刊しました。この冊子では「地元フリーランスの活用という新しい選択肢へ」ということで、現在フリーランスで活動されている受講生やICHIHARAISEが地元企業に認識してもらい、仕事や地域活性につながればと思います。冊子は市役所などに設置しています。

【いちはらフリーランスガイド】

【いちはらフリーランスガイド】

――今後の市原市の取り組み予定を教えてください

平井:市原市全体として情報発信は課題だと感じていて、その発信には地域のフリーランスの力が必要だと思います。今回の事業で、その土台ができたとも感じているので、そういった協力に期待しています。

また、市原市は工場が多く、どちらかといえば男性社会です。その中で、ICHIHARAISEのような女性のコミュニティがあることは素晴らしいですよね。今後も、いきいき輝いて活動してもらえるよう、見守っていければと考えます。

 

▶️文:フジイミツコ

千葉南房総へ移住後、二児の母となり、ランサーズ新しい働き方セミナーを経てライターデビュー。地元での取材ライター活動をメインに活躍する「雑談系ライター」。
https://www.lancers.jp/profile/fujimitsu

この記事に関連するワード

この記事に関連する記事