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子育てと仕事を両立したい、引っ越した先でも柔軟に働きたいなど、ワークスタイルのニーズは多様化しており、悩みを抱えている方も多く見られます。もしも地域にこのような悩みを解消する受け皿があったらどうでしょうか?静岡県は誰もが活躍できる社会の実現に向けて、誰もが自分らしく、いきいきと働くことのできる環境づくりに取り組んでいます。

このたび、仕事を依頼したい企業と個人をつなぐプラットフォームを運営するランサーズと協力し、場所や時間に制限されずに働くクラウドソーシングを活用した働き方の実践支援事業、「しずワーク」を立ち上げることになりました。取り組みへの内容と成果、今後の展望について、静岡県 知事直轄組織 政策推進局 総合政策課 政策推進班 鈴木将司様にお話しを伺いました。

しずワークはいつでもどこでも誰とでも働けるプラットフォーム

https://hosting.lancers.jp/lp/shizuwork/

しずワーク(https://hosting.lancers.jp/lp/shizuwork/)より

―――しずワークを立ち上げた経緯をお聞かせください。

しずワークは、人口減少を背景に、移住推進対策、子育てと両立できる働き方の拡大の2つをゴールとして立ち上げました。静岡県の人口は、2007年をピークに減少傾向にあります。詳しくお伝えすると、2007年に379万人ほどいた人口が、2023年には355万人となり、ここ16年で20万人以上が減少しています。年間ベースで見ると1年間で1.5万人減ですが、ここ数年では1年間で2万人減と人口減の割合も加速しています。

また転出している人口の性別や年齢の比率を見てみると、10代から20代の女性といった若年層の割合が多く、原因として魅力ある就労を求めて県外へと転出しているのが現状です。一方、静岡県への移住者数は2020年から4年連続1位を獲得しており、特に子育て世代である20代から40代が全体の8割を占めています。

このように、静岡県は、比較的若い人たちが転出している一方で、子育て層の転入が多いことが特徴です。しかしながら子育て世代の女性の就労状況は、出産を機に約半数が離職してしまうことや、復職を検討しても子育てと仕事との両立に不安を感じて思うようには働けないといったことが問題になっています。

このような課題を解決するために、場所や時間を制限せずに働けるクラウドソーシングを活用した働き方を推進することになりました。これは、インターネットを介して日本中の人と仕事ができるシステムで、パソコンを持っていれば自宅でも働けます。住む場所を制限せずに働けるため、仕事を求めて県外へ転出することや、移住した先で就労の心配をする必要がないので、人口減少や移住推進対策に効果が見込めます。

また子どもの体調不良などで思うように働くことができない中でも、しずワークを利用すれば、自分の好きな時間に魅力ある仕事をすることができます。例えば、チラシ作成の期日が1カ月先と仮定した場合、期日までに自分のスケジュールを確認して作業を進めることができます。また、仕事内容には文章作成、デザイン作成、動画作成、SNS代行など、魅力のある仕事が多いので、若者の就労拡大にも効果があると見込めます。

―――静岡県はインターネットを活用した柔軟な働き方が普及していますか?

令和4年度、テレワークを実施している静岡県の中小企業は約17%で、業種別で見ると、情報通信業が63%とトップである一方で、製造業は13%、医療・福祉は11%、飲食・宿泊業は3%と少なく、現場作業が求められる仕事ほどテレワークが普及していないことが分かります。

静岡県は地域柄、製造業が多いので、通信事業が多い東京都と比べてテレワークがなじみにくいことや導入に向けて会社規程を変更することへのハードルが高いという声がありますが、中小企業に対してテレワークを推進する講座の開催や普及を呼びかけることで、誰もが柔軟な働き方ができるような仕組みづくりを推進しています。

また、これからは人口減少に伴いさらなる人材不足が懸念されるので、外部人材を取り入れることが急務となります。ゆくゆくはしずワークから、外部人材を希望する県内企業と柔軟な働き方を求めるワーカーをマッチングできるような仕組みを構築することで、地域社会で持続可能な働き方ができるように努めます。

初年度は仕事を受けるための心構えとスキルを磨く

―――しずワークの取組と成果をお聞かせください。

しずワークは、令和5年度から始まった取り組みです。初年度の令和5年には、主に以下4つの施策を行いました。

・しずワークを普及するためのきっかけセミナーの開催
・仕事を受注するためのスキルアップセミナーの開催
・仕事の紹介や持続的に受注を支援していくための特設サイトの開設
・しずワークの取り組みを外部に発信するためのセミナーの開催

きっかけセミナーは現地・オンラインのハイブリッド開催とオンライン開催のみの計2回が開催され、参加者は計181人にものぼりました。参加者の内訳は、女性が約75%、男性が約25%と女性が多く、職業は、自営業・個人事業主が約25%、会社員が23%、主婦・主夫が16%、無職が9%です。既に仕事をしている人が半数を超えている一方で、これから新たにスキルを身につけて働きたいという人も見られました。

ここでは、大盛況で終わったしずワークに参加した人の声の一部をご紹介します。

「先輩ワーカーのリアルな働き方を知ることができ大変参考になった」
「オンラインでセミナーに参加することは初めてで少し不安もあったが、思っていたよりも気軽に参加できた」
「今の時代は多様な働き方が求められているので、しずワークのような取り組みが全国に広がっていくと良いと思う」

このようなご支持や評価を受けた中で、次はしずワークで仕事を受注するためにスキルアップを目指したスキルアップセミナーを4回開催しました。計100名の参加があり、多くの人がクラウドソーシングを活用した柔軟な働き方に興味や関心があることが分かりました。スキルアップセミナーは現役のフリーランストップランサーが自分らしい働き方に必要な知識をシェアするという講座です。

具体的には、受注経験を得るための第一歩「セルフブランディング」、初心者でも受注に繋がりやすい「SNSライティング」、スマホだけで始められる「写真・動画」、確実に仕事を獲得するための「仕事獲得法と単価交渉テクニック」の4講座を開催しました。

「講座でインプットしたことをアウトプットするワークがあったので理解が深まった」
「自分のスキルをどのようにPRして受注に繋げるのか、またパッケージにするために今やるべきことが分かった」
「自分と同じように何かに挑戦してみたい人との交流ができた」
このように、スキルアップセミナーを通して仕事を受注するための準備が進んだ様子がうかがえました。

スキルアップセミナーからコミュニティチャットが生まれる

―――どのような成果がありましたか?

取り組みを通して、3つの成果が得られました。まずは柔軟に働きたい人のきっかけを創出できたことです。参加者からは、しずワークを通して今までに経験したことのない業種にチャレンジできたことや個人の可能性を広げることができたという声が上がりました。

自分ではこの仕事に向いていないと思っていても、様々なセミナーや講座を受けることで、新しい自分に出会うことができます。思いがけないことがきっかけとなり、仕事に結びつくことがあります。クラウドソーシングと聞くと、限られたIT人材だけが活用するものだと思われがちです。しかしITスキルを望む人なら誰でも働くことができるシステムです。今後もきっかけを創出できるような仕組みを創ります。

次にワーカー同士の交流や相談し合うことを目的としたプラットフォームが生まれました。これは、スキルアップセミナーに参加した人同士が、受講後に立ち上げたコミュニティチャットのことで、主に情報交換の場所として活用されています。例えば、講座に参加した感想や、スキルアップを経て実際に仕事を受注したことの報告、仕事に関する情報交換などが行われています。クラウドソーシングはいつでもどこでも働けるメリットがある一方、1人で作業することが多いので、孤立してしまうことがあります。

しかしながら、プラットフォームがあることでいつでも気軽に悩みを相談できる利点があります。また1人ではなかなか踏み出せにくいことでも、仲間がいることで安心してチャレンジできるという心理的安全性も見込めます。今後もプラットフォームを支援できるような取り組みをします。

最後に、次年度のしずワークの事務局として活動するリーダーが8名誕生しました。これはスキルアップセミナーの参加者から希望者を募り、研修期間を経て生まれたもので、柔軟な働き方を希望する人をさらに普及、拡大することを目的としています。当事者から当事者へ、また一つ小さな輪が広がることで、しずワークのことをまだ知らない人への支援に繋がるだけではなく、柔軟な働き方をしたい全ての人の受け皿になることが見込まれます。このような3つの成果を得て、初年度はワーカーが自走するための基盤を作れた1年となりました。

オール日本として誰もが活躍できる社会を目指す

―――次年度以降の展望をお聞かせください。

初年度は数々の取り組みを通して、ワーカーの眠っている潜在力を引き出すことができました。そのため次年度は、受注に結び付くよう、伴走支援をテーマに3つの施策を行います。まず、今ある基盤をより強固なものとするために、県内で新たな発注企業を開拓することで、さらなる受注支援や就労の創出に努めます。次に、ワーカー同士が1つのグループとなり1つの仕事を行うワークシェアという働き方を推進します。これは1人が抱える仕事の負担を減らすことで、柔軟に働きたい人の裾野を増やすことを目的としています。

例えば、チラシ作成の仕事を受注するには、デザイン作成、カメラ撮影、ライティングなど少なくとも3つ以上の工程が必要になります。そこでスキルを持つ3人が集まり1つの仕事を担当することで、仕事を受注しやすくなるだけではなく、品質の向上が見込めます。

最後は現在開設中の受注支援ツールの利用率を上げることです。実際に利用した人からは、プロとして活躍している先輩からの声を聞くことができたという声がある一方で、具体的に何を相談したら良いのか分からない、1人では気軽に相談しにくいという声があります。私たちが設けた相談窓口は、「デザイナーになるにはどんなことから始めれば良いか」、「クラウドソーシングのプロフィールページを作成したけど、自信がないから添削してほしい」など、受注に結びつくことならどんなことでも受け付けています。1人でも多くの人にサービスを活用してもらうことや受注者同士の横の繋がりを築くことを目的として、皆で先輩フリーランスに相談するという企画を行います。

これはグループのうち1人が自分の仕事の悩みを相談している様子を他の参加者が見るというもので、個人の悩みが解消されるだけではなく傍で聞いている参加者もまた、自分の悩みに気づける効果があります。当事者同士お互いに刺激を受けることで、相乗効果が期待されます。しずワークのゴールは冒頭にお話しした通り、人口減少や移住推進対策、子育てと両立できる働き方の拡大ですが、初年度の取り組みを通してコミュニティ形成の大切さに気づきました。

クラウドソーシングはいつでもどこでも誰とでも働けるメリットがある一方、1人で作業することが多いので孤立してしまいがちです。そのため、いつでも会話ができるプラットフォームの存在やワークシェアという働き方が今後ますます求められると予測します。

最後となりましたが、しずワークを1つのチームとして、コミュニティの強化を図るとともに、取り組みの輪を全国に広めることで、オール日本として誰もが活躍できる社会の実現を目指します。

▶️文:佐野美幸
2023年度しずワークの「きっかけセミナー」に登壇しました。
Walker47(株式会社KADOKAWA)の元編集長で、現在フリーランスとして広報×デジタルマーケターをしています。趣味は写経とランニングで明るく前向きな性格です!
https://www.lancers.jp/profile/miyukisano-20231215

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