千葉南房総・都会に近い南国と“場所と時間を選ばない働き方”のマッチングで地方創生

人口減少に歯止めをかけるために、人材流出や子育て世代減少の課題を抱えている自治体は少なくありません。千葉県の最南端に位置する南房総市もそのひとつ。豊かな自然環境で保養地として昔から知られている地域です。

そんな地域としてのポテンシャルの高い南房総市とクラウドソーシングを使った“場所と時間を選ばない働き方”をマッチングさせた同市の取り組みをご紹介します。

仕事がない！でも、ポテンシャルの高い南房総市

温暖な気候を生かした花畑

京から車で約1時間半。房総半島の最南端にあり三方を海に囲まれ、温暖な気候で知られる南房総市。雪知らずのあたたかな空気、冬でもカラフルに咲き乱れる花畑、マリンスポーツを愛する人たちから絶大な人気を誇る豊かな海、まさに、都会に近い南国です。

そんな南国・南房総市には、人口減少が13年間で約7000人、県内世帯収入ワースト３、県内高齢化率ワースト３に入るという現状があります。

人口減少の要因のひとつとして考えられるのは、都会への人材の流出。南房総には市民や移住者が希望する職がない、というのが大きな理由です。市民や移住者の希望する職はデスクワークなどの事務系が多いのですが、大きな会社の少ない南房総市では事務系の仕事がほとんどありません。単純な求人倍率には反映されない事情がありました。

都会に近い南国の移住地としてのポテンシャルが高くても、実際に生活していけなければ意味がありません。

そこで、南房総市の地方創生担当者のアンテナに引っかかったのが、クラウドソーシングを使った“場所と時間を選ばない働き方”。自分の好きな土地にいながら、仕事ができる仕組みは、土地のポテンシャルは高いけれど働く場所のない南房総にピッタリの働き方だったのです。

自治体の役目はマッチング

講座について語ってくれた担当の金井さん

人口減少に歯止めをかけるため、子育て世代の増加を地方創生事業として掲げている南房総市。

“場所と時間を選ばない新しい働き方”は、その事業にもマッチすると考えた担当者は、子育て世代の中でも特に働く場所や時間を制限されがちなママをターゲットに据えました。ママが仕事を得られるようになれば、子育てがしやすい町になり、子育て世代の増加が見込めると考えたのです。

パートナーには、地方自治体と連携してクラウドソーシングの普及を行って実績のあるランサーズ株式会社を選びました。それと並行し、実際のママの意見を聞く機会を設け、託児を用意したりセミナー実施時期などを検討。自治体としてしっかりとターゲットを決め、そこへ向け注力したことが、クラウドソーシングを使った“新しい働き方講座”の早期開始、継続への力になりました。

今回お話を伺った現担当者の金井さんは「事業を展開してみて驚いたのは、埋もれている人材の多さ。特に子育て中のママさんのスキルは高く、それを活かすクラウドソーシングという新しい働き方を提案できたのは、価値のあるマッチングだったと思いますし、自治体の役目を果たせたのではと思います。」と笑顔で語ってくれました。

自走に向けて走り出す、その背中を押す存在に

講座終了後も集まって勉強会をする受講生たち

講座への参加者は3年間を通じて約60名。その中から、クラウドソーシングを活用するフリーランスが多く生まれ、“新しい働き方講座”をサポートするメンバーが誕生。さらに受講生たちで構成された「TEAM南房総」が発足、地域情報を発信する情報サイト「南房総ex-press～みなぷれ～」を立ち上げ運営しています。

講座の成果について聞くと、『クラウドソーシングによって、東京をはじめとした仕事のある場所から、南房総へのお金の流れができたのは嬉しい成果。ひとつひとつは小さくても、いずれ大きくなり、活性化につながると思いますし、この講座から生まれた地域情報サイトを運営する「TEAM南房総」はそれが実を結んだ一つの結果。手ごたえとともに非常に嬉しさを感じています。』と語る金井さんは「講座を見学する中で、自分自身もとても勉強になった」と、自治体内でのアウトソーシングの考え方やインターネットを使ったビデオ会議ツールの活用などの普及にも力を注いでいます。

「この講座を巣立ってくれた受講生たちは、私と自治体にとって“宝物”。みなさんが自走していけるよう、その背中を押せるような取り組みを今後していければと思っています。」と最後に金井さんは話してくれました。