地方創生の取り組み
事例紹介
山梨県甲州市には全国でも珍しい市が運営するコワーキングスペースがあります。その名も「シェアオフィス甲州」といい、短期貸出タイプのサテライトオフィスと個人利用ができるコワーキングスペースを兼ね備えた施設です。
甲州市では「シェアオフィス甲州」を軸として、地方創生事業の一環として、クラウドソーシングを活用した「新しい働き方」を推進しています。甲州市が行っている「新しい働き方」についての取り組みと、実例を交えて紹介します。
甲州市の主な産業はぶどうを中心とした農業です。そのため、農繁期の春から夏にかけては果樹園や観光農園の雇用が数多くありますが、反対に秋や冬は農閑期となり雇用が少なくなります。さらに近年は少子化や農家の高齢化に伴い、次の農業の担い手が不足。そこで甲州市では県外からの移住者を積極的に呼び込んでいますが、ここでも雇用の壁が立ちはだかります。
また、雇用の問題は子育て世代にも波及しています。甲州市にはさまざまなスキルはあるけれど、子どもが小さく時間が取れないために仕事を持つことができない子育て中の女性が非常に多くいます。
こうした問題を解決するための有効な手段として考えれたのが、クラウドソーシングを活用する「新しい働き方」です。甲州市では、時間や場所にとらわれずに仕事ができるクラウドソーシングに着目し、市を挙げて「新しい働き方」の浸透に取り組んでいます。
甲州市ではクラウドソーシングを活用した「新しい働き方」の裾野を広げるべく、クラウドソーシングのプラットフォーム企業ランサーズと提携して「新しい働き方講座」を開催しました。講師を招き、ランサーズを利用した仕事の受注方法や実践を交えたライティング講座を行っています。
講座には子育て世代の女性を中心に、自営業や農家の方、甲州市に移住した方など、さまざまなバックグラウンドを持つ人が集まりました。講座が終了した後も受講生同士で集まり、ライターチーム・甲州KULAS(くらす)を結成。甲州KULASは甲州市をはじめ、クラウドソーシングを通してさまざまな仕事を受注しています。
甲州KULASの受注事例のひとつは、甲州市がクライアントになっています。業務内容は甲州市が運営する移住支援ポータルサイト「甲州らいふ」内のコンテンツの作成です。
甲州市の生活を紹介する「甲州でできる54のこと」という記事の作成を甲州KULASに依頼。甲州KULASメンバーは甲州市在住の人がメインなのでリアルな『生きた情報』を持っています。通常、市からの依頼の場合、個人との契約は非常に難しいのですが、こちらの事例では地域の住民が結成する団体という形での業務委託契約を締結。甲州市としても「新しい働き方」を進めるにあたり、新しい仕事の発注の形を生み出しました。
〇甲州らいふ 甲州市移住支援ポータルサイト
https://www.city.koshu.yamanashi.jp/iju/
甲州市の推進している「新しい働き方」を行う重要な場所になっているのが、甲州市が運営する「シェアオフィス甲州」です。「シェアオフィス甲州」の利用用途は2つあり、コワーキングスペースとお試しサテライトオフィスがあります。
コワーキングスペースは個人利用のためのスペースで、大きめのデスクから個室、さらにはゆったりとくつろげる和室やソファースペースまで、さまざまなニーズに応えた施設です。利用登録をし、当初の登録料1000円を支払えば1回200円で市内外の人を問わず利用できます。
1階部分はお試しサテライトオフィスになっており、企業のサテライトオフィスや合宿、研修などの利用を目的として作られています。また、甲州市で起業する人のための足掛かり的な利用が目的なので、スペースの利用料も比較的廉価に設定されています。
シェアオフィス甲州は1階部分がコンビニで、敷地内には市役所の支所や託児ができる子育て支援センター、銀行のATMがあり、仕事をするのに十分な環境がそろっています。
甲州市のシェアオフィスの今後の展望について担当者の甲州市役所政策秘書課の日原健太郎さんに伺いました。
「新しい働き方と聞いて、まずは『何だろう?』と疑問はあると思います。クラウドソーシングなど、時間や場所にこだわらない仕事の方法があります。甲州市で暮らす子育てや介護など、働きたいけど時間などの制約があり十分に働けない多くの方に、インターネットを通じて日本中の仕事につながる、そんな働き方もあるんだって選択肢を講座やシェアオフィスを通じて提供できればと思っています。
また、これからは、量から質、発想やアイディアが大切になってくる中で、シェアオフィス甲州のある自然豊かな環境やその場所で出会える仲間の存在は良い刺激になるでしょう。多くの方がシェアオフィス甲州をきっかけに豊かな暮らしにつながる仕事を見つけ、甲州市での生活をエンジョイしてもらいたいです。」
甲州市の「新しい働き方講座」では受講者同士の交流も盛んで、講座以外でも受講生同士の自主勉強会も行われ、徐々に甲州市にも「新しい働き方」が浸透しています。甲州市では今後も「シェアオフィス甲州」を中心に新しい働き方講座の裾野を広げていく活動を行っていくそうです。
甲州市では新しい働き方を推進し、市自らも「新しい働き方」をするための場所やチャンスを提供しています。今後はそこから「新しい働き方」をどう発信していくのかに注目が集まります。
【情報1】
シェアオフィス甲州利用の流れ
◆コワーキングスペース(個人)
利用対象:18歳以上の方で仕事目的で利用する方
①利用者登録の登録申請
②審査登録決定
③登録カード発行(登録料1000円)
④利用申請(1日200円、1カ月3000円)
⑤施設の利用
◆おためしサテライトオフィス(企業・法人)
利用対象:甲州市内で事業展開を計画している法人
※「お試し」につき短期利用のみ
①利用者登録の登録申請
②審査登録決定
③登録カード発行(登録料1000円)
④利用申請(5000円~)
⑤市内に起業
詳しくはホームページを参照ください。
https://goo.gl/wnNTH7
【情報2】
[施設名称]シェアオフィス甲州
[住所]山梨県甲州市勝沼町勝沼756-1
[電話番号]0553‐32‐5037(甲州市役所・政策秘書課)
[営業時間]24h
[定休日]なし
[登録料]1000円(1年間有効)
[利用料金]
■コワーキングスペース
・200円/1日
・3,000円/1ヶ月
■お試しサテライトオフィス
・5,000円/1日以上2日以内
・6,000円/3日以上7日以内
・10,000円/8日以上14日以内
・20,000円/15日以上30日以内
[HPアドレス]https://goo.gl/wnNTH7(甲州市役所HP内記事)
[その他]利用の際には要事前申請
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