地方創生の取り組み
事例紹介
南房総市で開催された「新しい働き方講座”スクット”」の卒業生が新しい働き方コミュニティ「TEAM南房総」を結成。地域情報サイト「南房総ex-press」を立ち上げました。現在、各メンバーは地元でライターとして活躍しています。少しずつ仕事もとれるようになりました。
「南房総ex-press」はどのように作られ、成長しつつあるのでしょうか。その取り組みと今後の展望を紹介します。
消滅可能性都市に名前が上がっている南房総市。この地域を活性化するためには、子育て中の女性や移住者が仕事をしやすい環境を作ることが重要です。そのために有効な施策のひとつとして導き出されたのが「クラウドソーシングで仕事ができる人を増やすこと」でした。
商工観光部商工課の職員が中心となって事例調査を進め、平成28年、第1回「新しい働き方セミナー」が開催されました。
この講座は、時間と場所を選ばずに仕事ができるクラウドソーシングという働き方を紹介し、実践するまでをフォローするものです。しかしそれだけではなく「自分らしい働き方とは何か」を真剣に考える場でもありました。
その内容の豊かさと実用性が評判を呼び、第2回(平成29年)、第3回(平成30年)と回を重ね、徐々にクラウドソーシングで仕事ができる人材が増え、育っています。
南房総市での「新しい働き方講座」は、講座中からクラウドソーシングで仕事をして収入を得る経験をするようになっています。プログラムは「Webライティング」が中心。
簡単なレビューや体験談を書くことからはじめますが、より単価の高い仕事をとるためにはどのようにしたらよいのか、具体的な方法も学びます。内容が「お勉強」にとどまらず、実際に「仕事を得る=お金を稼ぐ」実践的な内容になっているため、決して楽なこと、楽しいことばかりではありません。
途中でパソコン操作が分からなくなってしまったり、書いているうちにまとまらなくなってしまったり、クライアントとのやりとりで迷ったり、と大小さまざまな壁にぶつかります。そうした時も、自主勉強会やチャットワーク(※1)を利用して教えあい、励まし合って乗り越えました。
こうして、講座が約5か月間続く中で、自然に仲間意識が高まりました。
また、講座の後半には1記事書いて数千円、といった単価の仕事を受注する受講生もでてきて「Webライティングは仕事として成り立つ!」という実感が受講生の間で広まってきたのです。
(講座終了後、最終的に月10万円以上稼ぐ人も出てきました。)
平成29年の受講生(第二期生)たちの講座が終盤にさしかかる頃、「講座終了後も、一緒に活動しよう」という声があがりはじめました。クラウドソーシングという一人で取り組む仕事を続けるには、助け合う仲間が必要。講座を通して皆が学んだことです。
「それでは、南房総の情報発信サイトを作ったらどうだろうか」という話が持ちあがりました。ライターとしての経験も積めるし、サイトを作ることで人の役に立てるし、仕事の依頼もくるのではないか。
・・・こうして16名で「TEAM南房総」を結成。情報発信サイト「南房総ex-press」開設に向けて動き、約5か月の準備期間を経て、2018(平成30)年4月29日にサイトを開設しました。
「南房総ex-press」(以後「みなぷれ」とします)がカバーするジャンルは、グルメ、親子、観光、暮らし、イベント等。これまでになかった地元に住むメンバーならではの活きた情報が提供されています。
記事はどのように作られているのでしょうか。
各メンバーが興味のあるテーマ、自信をもってオススメできる情報を記事にまとめます。自分が実際に体験したこと、直接取材して聞いてきたことを書くのが原則。書かれた記事は、2回校正します。情報・文章・写真の品質を一定レベルに保つ努力を怠りません。講座で学んだことをフルに活かし、基本に忠実に取り組む姿勢がうかがえます。
それだけではなく、チームでの知識の習得やスキルアップも図っています。今ではメンバーの多くが、WordPress(※2)を使って記事を投稿できるようになりました。皆で教え合って学んだ成果です。
チームワークを円滑に進め、サイトを拡大していくために欠かせないのが、毎月1回のミーティングとチャットワークでの活発なやりとり。こうしてメンバーのモチベーションは高いまま保たれ、サイトの記事数、ビュー数(アクセス数)が増え続けています。
少しずつではありますが、仕事の依頼がくるようになりました(※3)。
「みなぷれ」の記事を見た方からメンバーに直接、仕事の依頼が入ることもあります。地域全体にライターが少ないこともあり、今後引き合いが増えてくる可能性は高く、メンバー一同「みなぷれ」経由の仕事が入ってくるよう、日々腕を磨いています。
(※1)チャットワーク
クラウド型ビジネスチャットツール。メッセージのやりとり、タスク管理、ファイル共有、ビデオ通話などができます。基本的に無料で使えます。
(※2)Webサイト・ブログを作成するソフトウェアです。無料で使えます。
(※3)「みなぷれ」が受注した仕事の一例
下記2例は南房総市の紹介により受注しました。
・南房総市のWebサイトに掲載する取材記事、
→ 市内企業8社の求人を目的とした取材記事
・市内のIT企業の求人広告
→ 市役所に求人の相談があり「みなぷれ」を紹介していただいて実現
下記の例は「みなぷれ」に直接、依頼がきたものです。
・都内輸入車広告会社より「南房総でがんばる人々」の取材記事
・市内建設会社Web取材記事(現時点で引き合いのみ)
TEAM南房総のリーダー赤川美幸さんは数年前、首都圏から南房総に移住しました。移住する前から、フリーランスで菓子プランナーの仕事をしています。また1児の母でもあり、母親業と仕事でお忙しい中ではありますが、「みなぷれ」の今後についてお聞きしました。
______「みなぷれ」の今後の展望を聞かせてください!
「みなぷれ」を知名度のあるサイトにしていきたいですが、それだけではありません。サイトのアクセス解析によれば「みなぷれ」は意外なほど首都圏、都市部の人に見ていただいています。
私たちが情報を発信したことで、今まで知らなかった店やものを利用または購入してもらえれば、地域の人に利益が生まれます。南房総に潜在する魅力をもっとたくさんの人に知ってもらえば、ショートステイ、ロングステイ、あるいは移住といった形でこちらに来てくれる人が増えるでしょう。地域が賑やかになってくれば自然に仕事が増え、人も増え、地域の活性化につながると考えています。
自分たちが稼げればよいというのではなく、地域全体が元気なり、さらにその中で自分たちの活躍の場を広げていきたいと思っています。
南房総市主催「新しい働き方講座」のチラシ1枚で引き寄せられた仲間たちがともに学びの場を得、協力しあって情報発信サイトを立ち上げ、仕事を受注できるようになりました。南房総市と協力しつつ、自分たちで自立しつつ「地域の活性化」を実現していけるのではないでしょうか。
南房総市Webサイト
http://www.city.minamiboso.chiba.jp/
南房総ex-press(エクスプレス) ~みなぷれ~
https://mina-pre.chiba.jp/
次世代の働き方「クラウドソーシング」を活用した静岡県の取り組み事例
ゆるやかな絆と笑顔で続くコミュニティを育て見守り、女性に魅力ある市原市に。
親の働き方改革が子どもの未来をつくる!心豊かになれる選択肢を増やしたい
システムエンジニア気質の効率アップ術とモニター越しでもにじみでる親身さが武器
情報過多の現代は、『信頼貯金』が価値を創る